研究内容

 
 
Son A, Oshio T, Kawamura YI, Hagiwara T, Yamazaki M, Inagaki-Ohara K, Okada T, Wu P, Iseki M, Takaki S, Burkly LC, Dohi T. TWEAK/Fn14 pathway promotes a T helper 2-type chronic colitis with fibrosis in mice. Mucosal Immunology, 6: p. 1131-1142, 2013.
 

最近の論文発表より

Okada T, Fukuda S, Hase K, Nishiumi S, Izumi Y, Yoshida M, Hagiwara T, Kawashima R, Yamazaki M, Oshio T, Otsubo T, Inagaki-Ohara K, Kakimoto K, Higuchi K, Kawamura Y I, Ohno H, Dohi T. Microbiota-derived lactate accelerates colon epithelial cell turnover in starvation-refed mice. Nat Commun., 4:1654, 2013.
 

最近の学会発表より

最近の論文発表、学会発表から私たちの研究を紹介します。

Sezaki T, Hirata Y, Kawamura YI, Dohi T. Intestinal mucosal injury induced by anti-cancer agents is mediated by TWEAK/Fn14 and IL-13. 43回日本免疫学会総会, 20141212, 京都
Kawamura YI, Maeyashiki C, Hagiwara T, Otsubo T, Akiyama J, Dohi T. Sialic-acid-binding Ig-like lectins, potential peripheral markers for mucosal damage of inflammatory bowel disease. United Eurpean Gastroenterology (UEG) Oct. 22, 2014, Wienna
Kawamura YI, Hagiwara T, Otsubo T, Hashimoto S, Oshima K, Hattori M, Endo TA, Toyoda T, Kawamura YJ, Konishi F, Yano H, Saito Y, Matsumono T, Suzuki H, Toyoda M, Dohi T. DNA methylation in cell regeneration and cancer in ulcerative colitis. The 2nd JSGE International Topic Conference-Inflammation and Carcinogenesis of Digestive Organs. March 23, 2013、Kagoshima.
萩原 輝記、秋山 純一、三宅 大、大坪 武史、櫻井 俊之、清水 利夫、土肥 多惠子、河村 由紀. バレット食道および食道腺癌におけるDNAメチル化異常 第86回日本生化学会大会 2013年9月13日
Otsubo T, Kawamura YI, Dohi T. Cell type-specific, genome-wide epigenetic analysis for lamina propria cells isolated from the colon with ulcerative colitis. 第42回日本免疫学会学術集会. 2013年12月11日、千葉
 

DNAメチル化などのエピジェネティック修飾は、環境因子の影響の大きい疾患において重要な役割を果たしている。特に消化管では、発癌にも深く関与している。

 当部では、ヒト消化管病変のエピジェネティック修飾の網羅的解析系を確立した。手術標本や生検標本から大腸上皮細胞、粘膜固有層のマクロファージ/樹状細胞、CD3+T細胞を分離精製し、次世代シークエンサーを用いたChIP-seq解析で、細胞特異的な、複数のヒストン修飾の統合解析を進め、炎症の遷延化、重症化につながるエピゲノム変化を探索している。またDNAメチル化とトランスクリプトームの統合解析も進めている。

ここでは、絶食再摂食の際に大腸上皮が一過性の過剰増殖反応をおこすこと、この期間中は発癌剤に対する感受性が高まることを見いだした。さらに、無菌マウス、メタボローム、遺伝子発現などの解析により、この過増殖のメカニズムは、再摂食後に増加する乳酸菌の産生する乳酸による上皮細胞の代謝の変化であることを見いだした。多くの研究者の研究協力に基づき、大腸発癌における食習慣、食物繊維、腸内細菌叢の関わりを具体的に示すことができた。

 乳酸の作用メカニズム、免疫担当細胞の変化、小腸の応答機構、腸内細菌叢との関わり、糖尿病との関連など、今後の展望が大きく広がっているプロジェクトです。

Sd(a)糖鎖を合成する糖転移酵素B4GALNT2は正常組織のみに発現し、癌組織ではDNAメチル化によってサイレンシングされています。このため、胃癌ではB4GALNT2と基質を競合するフコース転移酵素が働き、癌胎児性糖鎖であるシアリルルイスxが新たに発現します。シアリルルイスxは接着分子E-セレクチンのリガンドであるため、シアリルルイスxの発現は転移など癌の悪性形質と相関します。この研究では胃癌の開腹手術をトリガーとする腹膜播種モデルを作成しました。開腹時にアデノウイルスベクターをもちいてB4GALNT2遺伝子を腹腔内に導入すると癌細胞にSd(a)の発現増加とシアリルルイスxの低下がおこり、転移巣の形成も抑制されました。遺伝子治療による、腹膜播種及び癌転移予防法に応用が可能な成果です。

Otsubo T, Hagiwara T, Okamura T, Ishizaka Y, Kawamura YI, Dohi T. Retrotransposition of long interspersed nucleotide element-1 is associated with colitis but not tumors in a murine colitic cancer model. PLOS ONE In press, 2015
 

近年注目を集めている内在性レトロエレメントL1は、通常メチル化によって不活化されていますが、活性化されると転写-逆転写-ゲノムへの挿入という過程をへて、ゲノム再編を誘導することが知られています。従って、L1活性化により誘発されるゲノム異常が、様々な病態の発症機転に関わると予測されます。本研究では、難治性疾患研究部で作製された、ヒト由来内在性レトロエレメントを組み込みその活性化を検出可能なマウスL1を用い、大腸炎症発癌モデルにおいて内在性レトロエレメントの活性化(L1-RTP)がどのような役割を果たしているかを調べました。その結果、DNAメチル化レベルと負の相関をもってL1-RTPがおこっているが、それは大腸上皮細胞や発生した腫瘍でなく、また炎症浸潤細胞でもなく、急性期腸炎の大腸間質細胞でのみ誘導されていました。この実験系ではL1-RTPは直接発癌に関わるというよりは、その前段階の炎症の重症度を左右していると考えられます。

食道扁平上皮癌の網羅的解析により、 periplakin (PPL)分子がメチル化異常によって発現低下していることを初めて見いだしました。さらに、PPLが細胞のデスモゾーム形成と重層構造に必要な分子であり、細胞の遊走を制限していることを示しました。PPL発現低下は食道癌の悪性形質の原因の一つと考えられます。

Otsubo T, Hagiwara T, Tamura-Nakano M, Sezaki T, Miyake O, Hinohara C, Shimizu T, Yamada K, Dohi T, Kawamura YI. Aberrant DNA hypermethylation reduces the expression of the desmosome-related molecule periplakin in esophageal squamous cell carcinoma. Cancer Medicine, DOI: 10.1002/cam4.369, 2015
 
Kawamura YI, Adachi Y, Curiel DT, Kawashima R, Kannagi R, Nishimoto N, Dohi T. Therapeutic adenoviral gene transfer of a glycosyltransferase for prevention of peritoneal dissemination and metastasis of gastric cancer. Cancer Gene Ther 21:427-33, 2014
 
Dohi T, Kawashima R, Kawamura YI, Otsubo T, Hagiwara T, Amatucci A, Michaelson J, Burkly LC. Pathological activation of canonical nuclear-factor kappaB by synergy of tumor necrosis factor alpha and TNF-like weak inducer of apoptosis in mouse acute colitis. Cytokine 69:14-21, 2014
 

これまでにTNFスーパーファミリー分子TWEAK とその受容体Fn14は炎症性腸疾患やどのモデル動物で重要な役割を果たしていることを報告してきました。この報告では、マウス急性腸炎モデルを用いて、TWEAKとTNF-alfaのシグナル経路が強力な相乗効果をもってNF-kB canonical pathwayを増幅していることを明らかにしました。

TNFスーパーファミリー分子TWEAK とその受容体Fn14は炎症や組織修復、細胞増殖、細胞死など、多面的な機能を持つ分子でありこれまでに炎症性腸疾患でその発現が亢進していることを報告してきた。

ここでは、慢性腸炎のマウスモデルにおいてみられる組織の線維化が、上皮細胞におけるTWEAK/Fn14シグナルを介したTh2型免疫を誘導するサイトカインTSLP産生によることを見いだした。また、IL-13による線維芽細胞の増殖もTWEAKの存在により亢進することを明らかにした。炎症性腸疾患の狭窄などの治療標的となる可能性がある。

 消化管におけるTWEAK/Fn14の多彩な機能についてはまだまだ謎に包まれた部分が多く、楽しい研究テーマです。

消化管は摂食に際してその形態と機能を大きく変化させる。この摂食応答を理解することが、消化管疾患や生活習慣病の病因研究として重要である。

マウス腹腔内マクロファージは、マクロファージの代表として免疫学実験に頻繁に使われてきたが、tissue macrophageとしての特性を持っている。その一つが、ケモカインCCLとその受容体CCR8によるオートクライン/パラクライン活性化による凝集機構である。さらに、この論文では腹腔マクロファージがLPS刺激に対してTNF-alfaやIL-6, IL-10を産生する際、CCR8の存在が必要であること見いだし報告した。このCCR8依存性は骨髄由来のマクロファージでは見られず、腹腔マクロファージの特徴である。また、CCR8阻害効果をもつ低分子化合物R243を新たにスクリーニングにより見いだし、これはマウスの術後腹膜癒着や腸炎の予防に有効であった。R243やCCR8の欠損はMAPK/JNK/AP-1 signaling pathwayを阻害すること、この下流にIL-10分泌のあることまでは明らかになったが、GPCRとTLR4がどのようにクロストークしているのかは、今後の課題である。

Oshio T, Kawashima R, Kawamura YI, Hagiwara T, Mizutani N, Okada T, Otsubo T, Inagaki-Ohara K, Matsukawa A, Haga T, Kakuta S, Iwakura Y, Hosokawa S and Dohi T. Chemokine receptor CCR8 is required for lipopolysaccharide-triggered cytokine production in mouse peritoneal macrophages. PLOS ONE 9:e94445, 2014