国立国際医療研究センター研究所
免疫制御研究部

Department of Immune Regulation
Research Institute
National Center for Global Health and Medicine

 
 
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研究概要 <Research>

1.疾患関連遺伝子Lnk/SH2B3と慢性炎症
 細胞内アダプター蛋白質Lnk/SH2B3は、サイトカインやインテグリンのシグナル制御分子として機能する。骨髄増殖性疾患の一部で変異や欠損が見つかっており、病態形成への関与が考えられる。一方、ゲノムワイド関連解析からアミノ酸置換を伴う多型が1型糖尿病やセリアック病などの自己免疫疾患群、心筋梗塞や高血圧症などの心血管障害に共通して連関することが判明し注目されている。Lnk/SH2B3発現をモニター可能なレポーターマウスを樹立し、Lnk欠損ではIL-15への反応性亢進から正常量のIL-15存在下でもCD8+T細胞の活性化が生じること、CD8+T細胞の蓄積が腸管組織障害の原因となっているというセリアック病の病態形成に繋がる分子機構を明らかにした。  さらに、Lnk欠損マウスでは樹状細胞が増加しておりGM-CSF やIL-15に対して感受性が亢進することがわかった。樹状細胞機能の変化によるT細胞分化誘導や活性化・維持への影響を明らかにした。様々な環境下、制御性T細胞を誘導するような環境下においてもIFN-γ産生性ヘルパーT(Th1)細胞分化を誘導する機能がLnk欠損樹状細胞では亢進していることが明らかになった。この現象のメカニズムについて、IL-15反応性亢進により樹状細胞上のIL-12Rβ鎖の発現上昇が生じており、IL-12のオートクライン作用によりナイーブT細胞へのIFN-γ供給が増強していることを明らかにした。さらに、GM-CSF反応性亢進によってレチノイン酸産生能が増強する。その結果、TGF-β存在下に制御性T細胞が誘導される環境下においても IL-15とGM-CSFによってTh1細胞が誘導されることがわかった。CD45.1/45.2アロタイプ系を利用して野生型とLnk欠損の混合骨髄キメラを作製し、同一個体内での機能を比較解析することで樹状細胞の表現型は体内微小環境ではなく細胞内因性の変化によることを証明した。Lnk欠損及び機能障害によりTh1応答が起きやすくなっており、易炎症性及び感染抵抗性が獲得されていると考えられる。

2.心血管障害病態形成におけるLnk/SH2B3機能障害の作用点
 Lnk/SH2B3の多型は心血管障害のリスクファクターでもあることが報告されているが、心血管系での機能はほとんど分かっていない。高血圧病態への関与機構解明を目指し解析を推進した。野生型マウスでは血圧上昇が認められない少量のアンギオテンシンIIを持続的に負荷したところ、Lnk欠損マウスでは高血圧が誘導されることがわかった。この高血圧誘導刺激への感受性亢進のメカニズムを明らかにした。心血管組織やアンギオテンシン産生に関わる腎臓に浸潤する免疫細胞群を解析し、サイトカイン産生能、血管内皮の応答性変化について詳細に検討した。定常状態でもLnk欠損マウスの腎臓には野生型に比してCD8+T細胞の浸潤が多く起こっており、アンギオテンシン負荷によりさらに増悪すること、これらのCD8+T細胞はIFN-γを産生する活性化状態にあり腎臓が慢性炎症状態に陥っていることがわかった。これに加えて、大動脈の外周組織にも活性化CD8+T細胞浸潤が観察され、内皮から産生される一酸化窒素レベルの低下が観察された。これらの変化による動脈の弛緩障害が高血圧の感受性亢進に寄与していることを初めて明らかにし、Lnk/SH2B3が高血圧治療の新たな標的となる可能性を報告した。

3.IL-5を大量に産生する2型自然リンパ球の活性化制御機構
 腸間膜や腸管粘膜でIL-5, IL-13を大量に産生する2型自然リンパ球(ILC2)が同定され、感染防御や組織修復、脂肪代謝の制御に重要な役割を果たすことが明らかにされつつあり大いに注目を集めている。我々は、IL-5受容体構造解析から継続してIL-5/IL-5受容体系機能の解析を進め、Il5発現細胞をモニターできるIl5-Venusレポーターマウスを樹立した。その結果、ヘルパーT細胞以外にもIL-5を産生する細胞があり肺実質に多く存在することを見出した。これらは肺常在性のILC2であり、IL-33により活性化され好酸球増加と活性化を介して腫瘍の肺転移を抑制することを明らかにした。ILC2が様々な組織に常在し、免疫応答や組織修復、代謝制御に働くことが明らかになりつつあるが、その維持及び活性化機構、抑制機構については不明な点が多い。肺ILC2のSAGE解析からIFN-γ受容体が発現していること、ILC2のIL-5及びIL-13産生をIFN-γが抑制すること、NKT細胞の活性化によりIL-33とともにIFN-γが同時に産生され、抗IFN-γ抗体投与によりILC2のIL-5及びIL-13産生が著しく増強すること見出した。炎症やウイルス感染による組織中のIFN-γレベルの変化がアレルギー応答の誘導や重症化に影響する可能性があること、またILC2の機能抑制に向けての一策を提示した。

4.B細胞における抗炎症性サイトカインIL-10産生機構
 B細胞は抗体産生を介して液性免疫応答の中心的役割を担い、免疫応答を促進的に制御する細胞として知られる。一方、制御性B細胞と呼ばれる新たなB細胞集団は、IL-10産生を介してマクロファージからの炎症性サイトカイン産生やT細胞の活性化を抑制することが報告されている。制御性B細胞は、脾臓やリンパ系組織内に非常に低頻度で存在しin vitroでToll like receptorやIL-21の刺激によってIL-10産生能を獲得することが報告されている。しかし、in vivoにおいてB細胞がどのようなメカニズムでIL-10を産生するのかは明らかになっていない。IL-10の発現をトレースすることのできるIL-10レポーターマウスを解析し、骨髄および脾臓において従来の制御性B細胞よりもはるかにIL-10産生能の高い新たなB細胞集団を見出した。表現型解析の結果、このB細胞集団はIgM+ B220- CD138+のplasma cellであることが明らかとなった。また、マイクロアレイによる遺伝子発現解析の結果、IgM+ plasma cellはナイーブB細胞と比較してIl10以外にIl13の発現が顕著に高いことがわかった。IL-10誘導刺激条件やシグナル伝達系を検討しB細胞におけるIl10発現制御機構とクラス変換との関連について解析を進めている。

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GWAS

 

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ILC2

 

IL10B