ホーム > トピック・関連情報 > プレスリリース > ラオス南部の村人からの無症候性マラリア感染の検出

ラオス南部の村人からの無症候性マラリア感染の検出

2018年1月25日

 国立国際医療研究センター

米国科学誌『PLOS Neglected Tropical Diseases』掲載

要旨

東南アジアの内陸国であるラオスはマラリア流行国である。ラオス政府の努力により、現在マラリア死亡者数・患者数は減少傾向にあり、政府は2030年までに同国からマラリアを排除(eliminate)することを目標に掲げている。我々は2015年に、ラオス南部のマラリア流行地域に住む村人719名を対象に、3種類の診断方法を用いてマラリア感染の有無を調べた。その結果、現地の病院で用いられている顕微鏡検査で、3名のマラリア原虫感染者を発見した。次に現地のヘルスセンター(簡易診療所)で用いられている迅速診断テストキット(RDTs)で、5名のマラリア原虫感染者を発見した。さらに遺伝子診断技術(PCR法)を用いて同じ検体を調べた結果、47名もの村人がマラリア原虫に感染しており、その多く(31名:66%)が成人男性であった。しかもこの47名のうち32名(68%)は無症状であった。一方、何らかの症状が認められた15名(32%)の村人のうち、マラリアに特徴的な症状である発熱(>37.5℃)が認められた村人は1名のみであった。さらにマラリア感染の危険因子を多変量解析で調べた結果、男性であること、並びに職業が軍関係者であることが危険因子であり、一方、過去に3回以上マラリア罹患経験があることが、無症候性マラリア原虫キャリアーとなる危険因子であった。

今後、ラオス政府が同国からのマラリア排除という目標を達成するためには、我々が用いた高感度遺伝子診断技術を活用して、積極的に無症候性マラリア原虫キャリアーを見つけ出して治療すること、並びにマラリア感染リスクが高い集団を対象とした対策を実施することが重要であると考えられる。

研究の背景

国立国際医療研究センター(NCGM)は、国際協力機構(JICA)と日本医療研究開発機構(AMED)が共同実施するSATREPSプログラムの支援を受け、NCGM海外研究拠点の一つであるラオス国立パスツール研究所と協働し、ラオスの寄生虫対策研究を2013年から実施している。これはラオス政府からの要請に基づく共同研究であり、その活動は研究だけでなくラオスの若手研究者人材の育成も行っている。ラオス政府は2030年までに同国のマラリアを排除することを目標に掲げているが、この目標を達成するためには、同国のマラリアの詳細な流行状況を明らかにし、より効果的な対策を立案して実施する必要がある。

本研究の概要・意義

ラオスでは、世界保健機構(WHO)と世界基金(グローバルファンド)の援助、並びにラオス政府の努力により、マラリアによる死亡者数・患者数が減少している。しかし、同国で用いられているマラリア診断方法(顕微鏡検査、RDTs)では、検出できないマラリア原虫感染者(キャリアー)がいることが徐々に明らかになってきた。またどのような要因がマラリア感染に影響を及ぼすのか不明な点も多い。そこで我々は、ラオス南部のマラリア患者報告数が多いアッタプー県の村人を対象に、マラリア検査とインタビュー調査を実施した。マラリア検査では顕微鏡検査とRDTsの他に、検出感度が高い遺伝子診断(PCR法)も実施した。その結果、PCR法でマラリア原虫感染が確認された村人の68%(32/47)が無症候性マラリア原虫キャリアーであった。ラオス政府のマラリア対策は、マラリア患者(症状がある者)のみを治療対象としているが、同国からのマラリア排除を達成するためには、流行地域に多数潜在していると予想される無症候性マラリア原虫キャリアーも積極的に見つけ出して治療することが重要だと考えられる。そのためには我々が用いた遺伝子診断技術を積極的に活用することが効果的だと言える。一方、遺伝子診断とインタビュー調査の結果を用いて多変量解析を行った結果、マラリア感染の危険因子は、男性であることと軍関係者であることであり、無症候性マラリア原虫キャリアーとなる危険因子は、3回以上のマラリア罹患経験があることであった。これらの発見はすでにラオス政府、並びにWHOに報告しており、今後、ラオス政府がマラリア対策計画をアップデートする際に非常に重要な情報となる。

マラリア患者は氷山の一角?

今後の展望

今後はラオスのマラリア流行地域に、日本が開発した簡易遺伝子診断システム(LAMP法)を導入し、現地の医療従事者が、顕微鏡検査やRDTsでは検出できないマラリア原虫感染を見つけ出し、治療が行える体制を構築する予定である。すでに我々はラオスのルアンプラバン県(北部)、サバナケット県(中部)、チャンパサック県(南部)及び首都ビエンチャン市に、マラリアLAMPシステムを導入した。今後はさらに多くの流行地域にこのLAMPシステムを導入する予定である。

発表雑誌

雑誌名:PLOS Neglected Tropical Diseases
論文名:The detection of cryptic Plasmodium infection among villagers in Attapeu province, Lao PDR
掲載日:米国東部標準時間12月20日にオンライン掲載

参照URL

PLOS Neglected Tropical Diseases ホームページ (http://journals.plos.org/plosntds/article?id=10.1371/journal.pntd.0006148)

本件に関するお問合せ先

国立国際医療研究センター研究所 熱帯医学・マラリア研究部
責任著者役職名 狩野 繁之(かのう しげゆき)
電話:03-3202-7181(内線 2877)
FAX:03-3202-7364
E-mail: kano@ri.ncgm.go.jp
〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1

取材に関するお問合せ先

国立国際医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
広報係長:三山 剛史(みやま つよし)
電話:03-5273-5258(直通) <9:00~17:00>
E-mail:tmiyama@hosp.ncgm.go.jp

トピック・関連情報
国立国際医療研究センター
ページの先頭へ戻る