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A novel PCR-based system for the detection of four species of human malaria parasites and Plasmodium knowlesi
<和文タイトル>4種のヒトマラリア原虫とPlasmodium knowlesi を検出する為の新規のPCR法に基づくシステム
2018年1月26日
国立国際医療研究センター
米国科学誌『PLOS ONE』掲載
研究の背景
マラリアは未だに世界中で猛威を奮う感染症であり、我が国では2020年のオリンピックを控えて輸入マラリア患者が増えることが懸念される。患者の適切な治療の為には、患者血液中に寄生している原虫種の鑑別を迅速かつ正確に行うことが重要である。マラリアの診断法は、顕微鏡で患者血液中の赤血球に寄生しているマラリア原虫を観察し、同定する方法が標準的な方法である。しかし、顕微鏡観察法は観察者の熟練が必要であり、また原虫感染赤血球数が少ない場合には目視では原虫を見つけられないのが弱点である。患者血液中のマラリア原虫DNAを増幅して検出するPCR法は高感度であり、顕微鏡を補う強力な方法として既に認識されているが、従来の方法では反応に総計2時間以上かかり、迅速性で劣ることが弱点であった。また熱帯熱、三日熱、卵形、四日熱の4種のヒトマラリア原虫に加えて、近年、東南アジアでサルマラリア原虫Plasmodium knowlesiがヒトに感染した例が相次いで報告されており、これを含めた5種マラリア原虫の鑑別が必要とされる様になった。本研究では、従来の18SrRNA遺伝子を標的としたPCR法を改良し、
- fast PCR酵素の使用によって反応時間の大幅な短縮を試みた。
- 5種マラリア原虫の鑑別を可能とするための新しいプライマーを設計した。
本研究の概要・意義
この系を用いて、まず各原虫の種特異的なプライマーによって、ターゲット種DNAが特異的に増幅、検出されることを実験的に確認した。各原虫種由来の18SrRNA遺伝子には様々なバリエーションが報告されているが、今回開発した系は、バリエーションを持つ各種DNAをも特異的に検出でき、未知の野外株の検出に応用可能であることが確認された。
さらに36名のマラリア疑い患者の血液サンプルを用いて本改良型PCR法の有用性を検討した。結果は総反応時間65分で得ることができ、従来法の顕微鏡診断法およびイムノクロマト法の結果と比較して矛盾の無いものであった。以上より、今回開発した改良型PCR法はヒトに感染したマラリア原虫種を短時間で正確に同定できる方法であると考える。
本方法には基本的な性能のみを備えたPCRマシンを用いるので高価なリアルタイムPCRマシン等は必要としない。最近、様々な原理によるマラリアの迅速な診断法が開発されているが、5種類の原虫種を正確に高感度で同定できるのはPCR法のみである。従来のPCR法の弱点を改良し、基本的な機器のみを使用しながらも、正確、高感度、短時間での原虫種の同定を可能とした本方法はマラリア診断の現場で患者への適切な治療法の提供に資する。
図1: 本研究の概要
今後の展望
我が国では感染症法におけるマラリア確定診断根拠としてPCR法が記載されているが、規格化されたPCRの方法は定まっていない。2020年のオリンピックを控えて輸入マラリア患者が増えることが懸念されている状況で、どこの施設でも使える規格化されたPCR法があることが望まれる。その方法として、本研究で開発した方法を強く提案する。更に本方法はマラリア原虫種同定法の世界的スタンダードになり得る。
発表雑誌
雑誌名:PLOS ONE
論文名:A novel PCR-based system for the detection of four species of human malaria parasites and Plasmodium knowlesi
掲載日:米国東部標準時間1月25日午後2時(日本時間1月26日午前4時)に、先行してオンライン版に掲載予定。
参照URL
PLOS ONE
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0191886
本件に関するお問合せ先
国立国際医療研究センター研究所 熱帯医学・マラリア研究部
責任著者役職名 部長 狩野 繁之(かのう しげゆき)
電話:03-3202-7181(内線 2877)
FAX:03-3202-7364
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