トップページ > 研究部紹介 > 膵島移植プロジェクト > つらい痛みのある慢性膵炎等に対する膵切除+自家膵島移植術
膵切除術に伴う自家膵島移植
膵島移植とは膵臓の中にあってインスリンを分泌しながら血糖調節を行っている「膵島(すいとう)」という組織のみを分離して移植する細胞移植療法です。
対象となるのは、つらい痛みのある慢性膵炎患者さんで、他の治療法が無効か一時的にしか効かなかった場合です。 痛みの除去のためには、原因となっている膵臓を切除することは大変有効とされています。 しかし、切除によって膵島も減少してしまうため、かなりの患者さんが術後糖尿病になってしまいます(全摘術の場合は100%)。 そこで、切除した膵臓から膵島のみを集め、患者さん自身に移植して戻します。
結果として糖尿病を予防したり、糖尿病にはなっても血糖コントロールが容易になるメリットがあります。
膵島移植の方法(自分への移植)
手術によって膵臓を一部または全部摘出します。次に手術で取り出した膵臓から膵島のみを分離します。
手術中に肝臓付近にある門脈という血管の中にカテーテルという細いチューブを注入します。 そのチューブを通して、点滴の要領でバッグ内に入った膵島を肝臓に注入します。
世界における重症慢性膵炎に対する自家膵島移植の成績
自家膵島移植は1970年代に始まり、激しい痛みのある慢性膵炎や膵良性腫瘍で膵切除を行う患者に対し行われてきました。 ただし高度な技術を必要とするため限られた施設でのみ実施されてきました。近年その有効性と安全性が認められ、 アメリカでは保険診療となり実施施設が増加しています。我々のチームが在籍していた米国のベイラー大学でもこれまでに40例以上膵全摘術+自家膵島移植を行い、 ほぼ全例で痛みの著名な改善を認め、またほぼ全例で移植した膵島が機能し、良好な血糖コントロールが得られています。
当センターで膵切除+自家膵島移植を開始します
当センターでもこの先進的な治療を早期に実施していきます。 我々の方法には現在の最新の知見を取り入れ、良好な成績を目指します。1人でも多くの苦しむ慢性膵炎患者さんを救うことが目標です。