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不安定1型糖尿病に対する膵島移植とは

膵島移植とは膵臓の中にあってインスリンを分泌しながら血糖調節を行っている「膵島(すいとう)」という組織のみを分離して移植する細胞移植療法です。

対象となる患者さんは、重度のインスリン依存性糖尿病(主に1型糖尿病)の方です。 具体的には、膵島の機能が著しく低下しているために、ご自身の膵臓からインスリンを分泌する事が出来ず、 インスリン注射治療や食事・運動療法などを行っても、血糖コントロールが極めて困難で、意識を失う重症低血糖発作を起こすような患者さんが対象になります。

膵島移植の方法(他者からの移植)

心停止または脳死状態の臓器提供者から提供された膵臓(日本では現時点では心停止ドナーのみ)から膵島のみを分離します。 ちなみに1個の膵島は直径約100~500マイクロメーター(1ミリの1/10~1/2の長さ)で、膵臓1個当たりに約100万個の膵島があると言われています。 大がかりな手術は必要とせず、通常は局所麻酔を行い肝臓付近にある門脈という血管の中にカテーテルという細いチューブを注入します。 そのチューブを通して、点滴の要領でバッグ内に入った膵島を注入します。

この方法は、手術と比べて患者さんにとって身体的負担がとても軽いと言えます。

 他者からの移植

世界における不安定1型糖尿病に対する膵島移植の成績

膵島移植は2000年にカナダのアルバータ大学によって劇的に改良されました。 彼らは、脳死状態になった2から3人の臓器提供者から分離した膵島を1人の1型糖尿病患者さんに移植するという治療を7人の患者さんに行い、 治療を受けた全員がインスリン注射が不要になりました。この快挙をきっかけに膵島移植が世界中に普及し始めましたが、 時間とともに機能が低下し、治療5年後までインスリン注射が不要だった症例は約10%のみでした。 ただし約80%の患者さんで5年間に渡って移植された膵島は一部機能しており、インスリン注射は必要だけれども血糖値は安定しているという結果が得られました。

近年では、さらに拒絶反応を抑えるお薬(免疫抑制剤)を改良する事によって、長期成績は改善しており、 治療5年後でもインスリン注射が不要な患者さんは約50%に上るという報告も米国のミネソタ大学はじめ複数の施設からなされています。 先述のように、以前は1人の患者さんがインスリン治療が不要になるためには、2~3人の臓器提供者が必要でしたが、我々のチームが在籍していた米国のベイラー大学では、 独自の拒絶反応対策を行う事により3人の患者さんにおいて、それぞれ一度の移植(1人の臓器提供者)でインスリン注射が不要になりました。 そのうち2人は、移植後約3年が経過した現在もインスリン不要のままで、もう1人はごく少量のインスリン補充は必要なものの、血糖値は極めて安定しています。

当センターで同種膵島移植開始を目指します

当センターでもこの先進的な治療を早期に実施していきます。 我々の方法には現在の最新の知見を取り入れ、良好な成績を目指します。1人でも多くの難治性糖尿病患者さんを救うことが目標です。

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