ホーム > トピック・関連情報 > プレスリリース > 患者から分離した新型コロナウイルス・オミクロン変異株のBA.4系統ならびにBA.5系統の性状解明
患者から分離した新型コロナウイルス・オミクロン変異株のBA.4系統ならびにBA.5系統の性状解明
2022年11月4日
東京大学医科学
国立国際医療研究センター
国立感染症研究所
1. 発表者:
河岡 義裕(東京大学医科学研究所 ウイルス感染部門 特任教授
国立国際医療研究センター 研究所 国際ウイルス感染症研究センター長
鈴木 忠樹(国立感染症研究所 感染病理部 部長)
2.発表のポイント :
- BA.4系統または現在流行の主流であるBA.5系統に属するオミクロン株(BA.4株、BA.5株)に感染した患者の臨床検体からウイルスを分離し、その性状を解析した。
- BA.5株を感染させた動物では、体重減少と呼吸器症状の悪化が見られないなど、病理解析の結果を含めその病原性はデルタ株よりも低く、2月から6月頃まで流行していたBA.2系統のオミクロン株(BA.2株)と同程度であった。
- BA.2株とBA.4株を同時に同じ個体に感染させ、どちらの株がハムスターの呼吸器でより増えやすいのか競合試験を行った。呼吸器で検出されたそれぞれの株の割合は、同程度か、ややBA.4株の方が高かった。一方、BA.2株とBA.5株を同時感染させたハムスターの呼吸器における割合は、BA.5株の方が高かった。
3.発表概要
東京大学医科学研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授らの研究グループは、新型コロナウイルス・オミクロン変異株のBA.4系統とBA.5系統の特性を明らかにしました。
2021年末に新型コロナウイルスの変異株・オミクロン株が南アフリカで確認されて以降、本変異株による流行が現在も世界規模で続いています。オミクロン株は、少なくとも5つの亜系統(BA.1、BA.2、BA.3、BA.4、BA.5)に分類されます。オミクロン株の流行が始まってから数ヶ月間は、BA.1系統に属する株(BA.1株)が世界の主流でしたが、2022年1月上旬からBA.2系統に属する株(BA.2株)の感染例が増加し始め、同年6月にはBA.2株が世界でもっとも流行していました。しかし、2022年7月以降、日本を含む多くの国々でBA.2系統からBA.5系統への置き換わりが急速に進み、BA.5株が主流となっています。一方、南アフリカやボツワナなどの一部の国では、BA.4系統に属する株(BA.4株)の感染例が一時的に増えました。
本研究グループは今回、BA.4株ならびにBA.5株を患者検体から分離し、その性状を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の動物モデル(ハムスター)を用いて評価し、オミクロン変異株出現前に流行していたデルタ株およびBA.2株と比較しました。その結果、BA.4株とBA.5株のハムスターにおける増殖力と病原性は、いずれもBA.2株と同程度でしたが、デルタ株と比較すると低いことが明らかになりました。
また、BA.2株とBA.4株を同時に同じ個体に感染させ、どちらの株がハムスターの呼吸器でより増えやすいのかを調べるために競合試験を行いました。呼吸器で検出されたそれぞれの株の割合は、同程度か、ややBA.4株の方が高い傾向が見られました。一方、BA.2株とBA.5株を同時に感染させたハムスターの呼吸器では、BA.5株の割合が高いことがわかりました。
本研究成果は、BA.4株とBA.5株のリスク評価など行政機関が今後の新型コロナウイルス感染症対策計画を策定、実施する上で、重要な情報となります。本研究成果は、2022年11月2日、英国科学雑誌「Nature」オンライン速報版で公開されました。
なお、本研究は、東京大学、国立国際医療研究センター、米国ウィスコンシン大学、国立感染症研究所、米国ユタ州立大学が共同で行ったものです。また、本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業並びに厚生労働科学研究費補助金新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業の一環として行われました。
- 詳細は以下のファイルをご覧ください。
リリース文書