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免疫を標的としたB型肝炎の創薬へ B型肝炎慢性化に関わる免疫の変化を発見 ―TLR7を標的とした治療開発に期待―

2024年10月9日
国立大学法人 大阪大学
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター

1. 発表者

考藤 達哉(国立国際医療研究センター 肝炎免疫研究センター長)


2. 研究成果のポイント

概要

大阪大学大学院医学系研究科の小玉尚宏助教、竹原徹郎教授(消化器内科学)、大阪大学医学部付属病院未来医療開発部の滋野聡医員、国立国際医療研究センターの考藤達哉肝炎・免疫研究センター長らの研究グループは、B型肝炎ウイルス(HBV)が持続感染している状態における免疫細胞の疲弊状態をマウスで再現させることに成功し、新規Toll様受容体7(TLR7)作動薬SA-5が免疫賦活により、抗ウイルス効果を発揮することを示しました(図1)。

免疫を標的としたB型肝炎の創薬へ B型肝炎慢性化に関わる免疫の変化を発見 ―TLR7を標的とした治療開発に期待―


B型肝炎ウイルスは、慢性肝炎や肝硬変、そして肝がんを引き起こす世界的な感染症であり、現在までに体内からのウイルス排除を高率に達成できる治療法は存在していません。B型肝炎の慢性化にはウイルスによる免疫のかく乱が関与していると考えられていますが、免疫動態を模倣した動物モデルが極めて少なく、未だ不明な点が多く残されています。
今回研究グループは、HBVが持続感染し、慢性肝炎による免疫動態を観察できるマウスモデルの作成に成功しました。このモデルを用いた解析から、細胞傷害性T細胞の機能低下(=疲弊)がB型肝炎の慢性化と関係していることを同定しました。またこのマウスでは、B型肝炎の治療薬であるI型インターフェロン*4の投与により、免疫系の活性化や体内のウイルス減少効果が認められ、免疫を標的とした創薬評価にもこのモデルが有用であると考えられました。そこで、大日本住友製薬株式会社(現 住友ファーマ株式会社)と国立国際医療研究センターが共同研究を行なっている新規Toll様受容体7(TLR7)作動薬SA-5の効果を検証した結果、インターフェロンよりも更に強力な免疫賦活が誘導され、ウイルス減少効果も認められました。以上から、SA-5がB型肝炎に対するウイルス排除を目指した新たな治療薬になる可能性が示されました。
本研究成果は、米国科学誌「Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology」に、9月28日(土)にオンライン公開されました。

用語説明

*1細胞傷害性T細胞:細胞表面にCD8という分子を持つT細胞で、宿主にとって異物になる細胞(がん細胞、ウイルス感染細胞など)を認識して破壊する細胞。

*2疲弊:T細胞などが免疫チェックポイント分子などの発現により機能が低下すること。

*3Toll様受容体7(TLR7):Toll様受容体は自然免疫に重要な役割を果たす抗原受容体で、TLR7はウイルス由来の1本鎖RNAを認識する。

*4I型インターフェロン:自然免疫における抗ウイルス活性の中心的な役割を担っているサイトカイン。



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