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原因不明の⼥児の知的能⼒障害の12%にWDR45 変異~⼥児の知的能⼒障害の主要な原因を特定~
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(NCGM)
1. 発表者
徳永 勝士(国立国際医療研究センター 研究所 ゲノム医科学プロジェクト長)
概要
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)メディカル・ゲノムセンターの後藤雄一特任研究部長、井上健室長、阿部ちひろ研究員および国立国際医療研究センター(NCGM)ゲノム医科学プロジェクトの徳永勝士プロジェクト長らの研究グループは、知的能力障害の診断を受けた女性患者さんの遺伝子解析を行い、X染色体上にあるWDR45遺伝子の変異*1)が主要な原因の一つであることを見出しました。
WDR45遺伝子変異では成人期に急激な運動・認知機能の退行がみられることから、小児期の患者さんの診断を早期に確定することは生涯にわたる医療を提供するために重要です。また、女性ではX染色体が2本存在するため、遺伝子変異を含むX染色体と含まない染色体のどちらがどの程度抑制されるか(不活化)が重症度に関連すると考えられていましたが、WDR45遺伝子の変異が原因の場合は、重症度はそれだけでは予測できないことが示唆されました。この結果は、遺伝子変異と症状の関連の複雑さを示しています。
本研究成果は2024年10月28日に、国際学術雑誌「Journal of Medical Genetics」に公開されました。
研究背景
知的能力障害は、全般的知能(論理的に考えて問題を解決したり計画を立てたり、経験から学び取ることなど)や、生活へ適応する力が幼少期から障害されている発達障害で、全世界で約1~3%の有病率とされています。多くの場合は遺伝的な要因と環境的な要因が組み合わさりその原因になりますが、全部で2万種類以上あるヒトの遺伝子のうちたった1つの遺伝子の変異1が原因となることもあります。これまで女性ではMECP2、男性ではFMR1などが頻度の高い原因遺伝子として知られています。
WDR45遺伝子は知的能力障害に関係する遺伝子のひとつで、その変異は、成人になってからの運動や認知機能の急激な衰え(退行)と脳内への鉄沈着を特徴とする病気(NBIA5)をもたらします。その多くは女性の患者さんです。一方で、幼少時には特徴的な症状や検査の所見がないことから、臨床的に早期に診断することは容易ではありませんでした。しかし遺伝子解析によって早期に診断することで、将来おこりうる症状の予測がつくなど医療やケアに有用な情報が得られます。本研究では、すでに知られている主要な遺伝子群(MECP2や微小欠失/重複)に異常がないことが分かっている32例の女性の知的能力障害の患者さんについて、どのくらいの頻度でWDR45遺伝子の変異をもつ患者さんが含まれるか、また変異をもつ患者さんの症状の特徴について調べました。
用語解説
1. 変異:遺伝子を構成する塩基配列(アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T))の変化。例えば、AがGになる、CがTになる、などいろいろな変化がある。
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