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極微量の溶媒を用いる質量分析イメージングで精子形成に重要な脂質を可視化することに成功

12月3日

1. 発表者

進藤 英雄(国立国際医療研究センター 研究所 脂質生命科学研究部)

研究成果のポイント

概要

大阪大学理学研究科物理学専攻の大塚洋一准教授と岡田茉樹さん(当時博士前期課程)、豊田岐聡教授、国立国際医療研究センター、実中研、株式会社島津製作所の研究グループは、極微量の溶媒を使って、生体組織の脂質を詳細に観察するための技術を開発しました。この技術は「質量分析イメージング」*2)と呼ばれ、生体組織に含まれる成分の分布を可視化することができます。
今回、研究グループが開発した技術を用いて、マウスの精巣組織の分析を行った結果、精子が形作られる過程において特定の脂質が特徴的な分布を示し、精子形成の段階や疾患状態に依存して、それらの分布が変化することを見いだしました(図1)。精子形成の異常化など、疾患に関与する脂質の研究に、本技術は新たな知見を提供することが期待されます。
本研究成果は、科学誌「Analytical and Bioanalytical Chemistry」に、11月22日(金)に公開されました。

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図1 t-SPESIの装置開発により、マウス精巣組織の脂質分布を5μmのピクセル間隔で可視化することが出来た。

用語解説

*1) DHA:
ドコサヘキサエン酸の略称。人の体内で合成できない必須脂肪酸の一種であることから、食事から摂取する必要があります。特に青魚に多く含まれ、細胞膜の柔軟性を高める役割を果たします。

*2) 質量分析イメージング:
質量分析は、物質を構成する分子やイオンの質量を測定する技術です。試料に含まれる分子をガス状態のイオンに変換(イオン化)し、そのイオンを質量分析装置で高感度に検出することにより、試料に含まれる分子の種類や量を特定できます。質量分析は、分子構造の解析や物質の品質管理など、幅広い分野で活用されています。大阪大学理学研究科物理学専攻は質量分析技術の研究開発において長い歴史を持ち、質量分析の発展に貢献してきました。 質量分析イメージングは、質量分析の技術を応用して、試料内の分子の分布を画像として可視化する技術です。試料を局所的に気体状態のイオンに変換し、質量分析装置で分析する技術が必要で、様々な方法が開発されています。生体組織内の分子分布を詳細に調べることで、脂質やタンパク質などが組織中でどのように分布しているかを視覚化することができます。

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