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透過型電顕用固定プロトコール

サンプルの固定(同時二重固定法)

試料の性質や目的により、固定剤の選択や固定方法を選択する必要があり、打ち合わせ時に幾つかの方法をご提案いたします。
一般的には「アルデヒド系前固定→オスミウム酸後固定」の二重固定法が用いられますが、当システムでは、より簡便で、且つ多くの場合に膜系をよく保存する固定方法として、『アルデヒド・オスミウム酸の同時二重固定法(上記2種類が混合済みの1液を用いる)』を採用しております。
固定液は、サンプリング直前に支援員が用事調整し、依頼者にお渡しいたします。
試料に対してたっぷりの固定液の中で、1から2時間、室温でゆっくりと撹拌しながら固定液を浸透させます。
固定が進むにつれ、試料と固定液が褐色から黒色に変化していきます。
固定が完了しましたら、細胞の浸透圧は気にしなくてよくなります。ミリQ水でよく洗い(3回以上)、支援員にお引き渡しください。
注:固定液は時間経過に従って褐色に色づいてしまいます。固定直前にお渡しできるようにスケジュールをお打ち合わせください。
注:固定廃液と洗浄1回目のミリQ水は、当システムでまとめて廃液処理いたしますので、管理委員にお渡しください。

電子染色 脱水 包埋

固定、洗浄が終わった試料は、支援員にお引き渡し頂いた後、電子染色・脱水・樹脂包埋されます。
電子染色は、0.5%酢酸ウラニル水溶液で 1から2時間 室温で行います。
樹脂包埋よりも前の工程で電子染色するこの方法は「ブロック染色 (en bloc staining)」と呼ばれており、切片の電子染色工程よりも簡便で、且つ切片を汚染・損傷するリスクを避けるというメリットがあります。

電子染色の後は50%EtOHで洗浄し、引き続きEtOHシリーズで脱水します(70%→90%→100%×3回)。
十分に脱水された試料は、引き続きエポキシ樹脂(Quetol 812;Nisshin EM)に置換します。EtOH/エポキシ樹脂の混合液に浸漬し、徐々にエポキシ樹脂の濃度を上げながら、1昼夜かけて細胞内の水分を完全に樹脂に置き換えます。

電子染色 脱水 包埋引き続き、60℃で最低2昼夜かけて樹脂を重合させます。このとき、試料の形状や方向性(オリエンテーション)を考慮しながら、包埋方法をデザインします。
試料によっては、専用のカプセル内に包埋する場合と、ディッシュなどに培養したまま平板包埋する場合があります。
平板包埋の場合は、必要な部位を糸鋸で切り出して支持台に固定し、剃刀で切削面をトリミングしてから ウルトラミクロトームで超薄切片を作成します。
100ナノメートル厚に切った切片は、フォルムバール支持膜を張った直径3MMのグリッド(光顕のスライドグラスに相当するもの)に載せ、グリッドケースに入れた状態で依頼者に納品いたします。
電顕観察支援は、平日午前10時から午後5時の間で随時対応いたします。お気軽にご相談ください。

Materials and Methods 記載例:培養細胞の場合

Transmission electron microscopy

Transmission electron microscopyCells on culture dishes (Nunclon™Δ Surface, Nunc, Roskilde, Denmark) were fixed for TEM observation according to Shirato et al. (2006)(外部リンク) with slight modifications. Each sample was washed briefly with PBS and fixed with aldehyde-OsO4 mixture [1.25% glutaraldehyde, 1% paraformaldehyde, 0.32% K3[Fe(CN)6] and 1% OsO4 in 30mM HEPES buffer (pH 7.4)] for 1 hour at room temperature. Fixed cells were washed with Milli Q water for 3 times and stained en bloc with 0.5% uranyl acetate for 2 hours, dehydrated in an ethanol series, and then embedded in Quetol 812 (Nisshin EM, Tokyo, Japan). The blocks were trimmed to an area of approximately 0.5 mm and serially sectioned at 100nm thickness with an ultramicrotome (Leica EM UC7, Leica, Wien, Austria). The thin sections were examined in an electron microscope (JEM-1400, JEOL, Tokyo, Japan).

酢酸ウラニル使用の手引き

電顕試料作成に欠かせない電子染色には、酢酸ウラニルを用います。ウラン化合物は、国際規制物質の一つに指定されており、使用に当たっては厳密な管理の元行われることが義務付けられています。当センターでは、依頼者から試料作成支援として引き渡された試料は、管理委員・支援者が適切な方法でウラン電子染色した後に依頼者にお引き渡しいたしますので、基本的には依頼者ご本人がウラン化合物に触れることはありません。
ここに挙げる「酢酸ウラニル使用の手引き」は、電顕試料を自ら作成される方のために、当研究所が定めたガイドラインです。
(注:本ガイドラインの内容については、必要に応じ随時修正・更新することがあります)

はじめに

酢酸ウラニルは「国際規制物資」の1つ、核燃料物質です。使用にあたっては国際規制物資の届出及び計量管理が必要であり、法律によって厳しい管理が義務付けられています。国際医療研究センター研究所は、この酢酸ウラニルの使用許可を受けた研究施設(MBA)に指定されています。
酢酸ウラニルの管理については、研究所長を管理責任者とし、核燃料物質計量管理委員会が設置されています。酢酸ウラニル(粉末)は、文科省に申請済みの保管場所に管理委員が施錠保管し、半年ごとに計量管理記録を提出することが義務付けられています。本研究所では、計量管理記録を一元化するために、管理委員が酢酸ウラニル溶液を作成し、研究者の皆様に随時分与致します。
廃液は、流し等に捨てることができません。最終廃棄処理の方法が法的に整備されていない現在、原則として施設内に保管廃棄(永久保存)です。廃液は下記の「3.廃液の取り扱いについて」に準じ、管理委員にお引き渡しください。
ご利用の皆様・周辺への安全を十分に確保するために、下記のガイドラインを熟知のうえ、研究を行ってください。

1.保管・計量管理について

保管・希釈用分与、および研究所外部への持ち出し・外部からの受け入れにあたっては、研究所長を管理責任者とし、核燃料物質計量管理委員会を一元的な窓口と定める。計量管理責任者は、計量管理規程に基づき増減管理を行い、毎年6月末・12月末に文科省に計量管理記録報告書を提出する。
酢酸ウラニル(粉末)・廃液等は、鉛シートに包んだ容器に入れ、転倒・漏出しないように配慮して電顕室内キャビネットに保管する。キャビネットは管理委員が施錠する。

2.酢酸ウラニル溶液作成依頼・使用について

酢酸ウラニル溶液は、管理委員が作成したものを各研究者に分与する。使用にあたっては、管理委員に申請し、管理委員立ち会いのもと手渡しで受け取る。溶液は、作成日から2から3ヶ月間程度使用できる。
注:切片作成支援を依頼される場合は、電子染色済みの試料(グリッド)をお渡しいたします。
ご自身で切片を作成される場合には、お好みの濃度で調整してご用意いたします。どうぞご相談ください。
ウラン溶液の使用は各実験室で行えるものとするが、下記の注意事項を遵守する。

3.廃液の取り扱いについて

各実験室で発生したウラン廃液は、法令等が定められるまで下記の方法で研究所内に廃棄保管する。

パラフィン組織切片用の固定について

パラフィン組織切片用の固定について組織切片用の固定には、一般的には10から20%の中性緩衝ホルマリン、4%パラホルムアルデヒドなどのアルデヒド系固定液を用います。
臓器によっては、浸透性の高いピクリン酸を用いたブアン(Bouin)固定が有効な場合もあります。

浸漬固定の場合には、組織への固定液の浸透を良くする工夫が非常に重要です。固定不足は、臓器の内部の組織が崩れたり、染色性の低下を招きます。
固定液の浸透に要する時間は「1ミリメートル/時間」程度といわれています。解析に差し支えない程度にメスで割を入れたり、数ミリメートル厚程度にスライスしていただきますと、良好な固定結果が得られます。
摘出した臓器を適切な大きさに裁断し、鉛筆でラベルしたヒストカセットにセットし、ビーカーなどに入れたたっぷりの固定液の中で、撹拌しながら固定液を浸透させます。
ヒストカセットはお分けいたしますので、ご遠慮なくお申し出ください。

アルデヒド固定後は、アルデヒド分を除去するために、少なくとも3時間程度流水(またはPBS)で洗浄してください。
その後、70%エタノールに浸漬した状態で サンプルをお引き受けいたします。
ピクリン酸固定の場合は、70%エタノールで色抜きしてください。

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