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英国 科学誌『British Journal of Cancer』掲載
Development of a protein-based system for transient epigenetic repression of immune-checkpoint molecule and enhancement of anti-tumor activity of natural killer cells.
安全なゲノム編集技術を用いた免疫チェックポイント分子の抑制によるナチュラルキラー細胞の抗腫瘍効果の増強
2020年1月21日
国立国際医療研究センター
広島大学
(要旨)
国立国際医療研究センター(NCGM)難治性疾患研究部 石坂 幸人 部長と広島大学大学院統合生命科学研究科 山本 卓 教授らとの共同研究成果として、組み換え蛋白質で免疫チェックポイント分子の発現を一過的に抑制できるシステム(ゲノムモジュレーターシステム)を開発し、今回、PD-1を標的分子とするゲノムモジュレーターをナチュラルキラー細胞に作用することで、抗腫瘍効果が顕著に増強できることを証明した。
【研究の背景】
免疫チェックポイント分子に対する抗体を用いたがん免疫療法が注目されているが、抗体の全身投与による副作用や、有効例が20%前後であることなど、さらなる改良が必要である。NCGMは、2018年、既存の分子よりも機能性に優れたペプチドベクター(NTP)を発明し、これを広島大学が開発したゲノム認識分子と組み合わせることで、組み換え蛋白質による「人工転写制御システム」を開発した。今回、遺伝子発現を一過的に抑制できるシステム(ゲノムモジュレーター)を開発し、がん免疫療法に応用した。
【本研究の概要・意義】
ヒトナチュラルキラー細胞にPD-1標的ゲノムモジュレーターを5日間作用した後、ヒト卵巣がん細胞株を移植した免疫不全マウスに投与したところ、腫瘍の増殖が有意に抑制された(図1)。
がんの増殖制御には、異なる様々な免疫チェックポイント分子が関与している。ゲノムモジュレーターは、ゲノム認識分子を変えることで、様々な免疫チェックポイント分子に応用可能であり、汎用性の高いシステムとしてがん医療に貢献できるものと期待される。
【今後の展望】
今回開発したゲノムモジュレーターシステムは、様々な遺伝子に応用することが可能で、がん免疫療法だけで無く、例えば、再生医療など、様々な分野での有用性を明らかにして行きたいと考えている。
発表雑誌
- 雑誌名
British J Cancer - 論文名
Development of a protein-based system for transient epigenetic repression of immune-checkpoint molecule and enhancement of anti-tumor activity of natural killer cells. - 掲載日
GMT1月21日午前0時(日本時間1月21日午前9時)に、先行してオンライン版に掲載。
参照URL
British Journal of Cancer (https://www.nature.com/bjc/)
本件に関するお問合せ先
国立国際医療研究センター研究所 難治性疾患研究部
責任著者 石坂 幸人(いしざか ゆきひと)
Tel: 03-3202-7181(内線 2806)FAX: 03-3202-7364
E-mail:zakay@ri.ncgm.go.jp
〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1
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国立国際医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
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